2013年夏のサロンは、梅雨の最中にも関わらず晴れ間がのぞき、レクチャー「活版印刷前夜—江戸の出版人と読者」も初夏の雰囲気とともに開催されました。
展示物のほかにも橋口氏の計らいで、手に取って見られるようにと参考資料をいくつか持ってきていただきました。
堅い木を彫って作った板木から刷られたとは思えないほどのしなやかな連綿体や力強い書体の漢字など、時空を越えて存在している書物を目の前にし、私たちも江戸時代にタイムスリップした気がしました。
本は次の世代に引き継いで行くものであるという考えは、西洋も同じだと思います。ただ読めればいいということではなく、表紙に使用する染め紙などで季節感を出したもの、本自体に書き入れをしていくことにより、本を成長させていくというお話を聞き、まるで人間に服を着せ、知識を与えて育てて行くような雰囲気があり、読者もさることながら、書物からも命の息吹を感じました。
嫁入り本の源氏物語は表紙には書名はなく、見返しの左上にちょこっと書いてあります。書いてはあるものの、読めませんでした・・・。
完全分業制で、筆工、彫り師、刷り師など職人たちの素晴らしい共同作業が挿絵から想像できます。なかでも彫り師は1ページを1日半で彫ってしまうとか。筆工の、同じ「の」の字でも箇所によってわざと異なって書くという、同じに書くのは野暮!という粋な計らいも、てやんでぃ(!)な発見でした。
それにしても、寺子屋の挿絵はなぜいつ見てもとても楽しそうなのでしょうか。私も一度通ってみたいものです。