2013年冬のサロンレクチャーは、パリに渡った日本人画家・藤田嗣治の「本のしごと」について、林洋子先生にお話をしていただきました。
もともとのご自身の研究を進めていくうちに、常に浮上するFoujitaの名前をさけて通らずにはいられなくなり、今に至っている林先生。
1920年代という時代、パリという場所、そして画家の描く挿画の三つ巴によって生まれた「livre illustré」や「livre de peintre」には圧倒的なテクストと挿絵の調和があります。
番号付きの限定本には、使用されている紙質などにより松竹梅があるというお話でしたが、WABPでの11月のテーマとも重なって、来場していただいたみなさまには実際に様々な挿絵本を手に取って見ていただいて、その素晴らしさを感じていただけたのではないでしょうか。
「シャガールへの手紙」 テクスト:フィツォフスキ 画:シャガール
「セビリアの理髪師」 テクスト:ボーマルシェ 画:ドラン
異国の地パリで画家としてすでに地位を築いていたFoujitaは、親しく関わりのある人のために、また自分の好きな物だけを選び、何に縛られる事なく自由に色々なスタイルで挿絵をつけていたそうで、それぞれの本が個性豊かで、決して挿絵がテクストのお供ではないlivre illustréになっているのも納得です。
「朝日の中の黒鳥」 テクスト:ポール・クローデル 画:藤田嗣治
大原美術館で観た乳白色の絵画も素敵でしたが、Foujitaのおかっぱ頭に丸ぶちめがねというヴィジュアルに尻込みしてしまっている方々(私自身がそうでした)にも、彼の洗練された本のしごとを是非見ていただきたい。そして、版画集と考えれば決して高くないと言われた、Foujitaのlivre illustréをこの手にせめて1冊は欲しい!と切望したのでありました・・・。