毎日毎日、人間の体温をも上回る酷暑が続き、外に出ると息も出来ないほどです。
そんな日本から逃避行して、今回は爽やかだったイギリスへとご案内いたします。
初めてのアイルランドを旅立ち、機中ニコリともしないフライトアテンダントの視線をなぜだかずっと感じつつ、約10年ぶりにイギリスはロンドンに降り立ちました。
預けた荷物の引き取りに失敗(?)し、スーツケースを探しに彷徨うこと小一時間、数人の係員にたらい回しにされ、やっと私物を取り戻すことができ、改めてヒースローの広さとややこしさを実感いたしました。
イギリスでの目的は、年に1度開催されるアンティークブックフェアを見学する(冷やかす)ことと、イギリス人製本家3名に会うことでした。
まずは英国国立図書館も見ておこうと、足を運びました。入口付近にある本のかたちをした椅子を発見、さすがだなと思いました。
しかしそこでは一番見学したかった王様の部屋には入れてもらえず、肩を落として退散しました。
ロンドン中心部から少し外れたところで開催されるアンティーク・ブックフェアは、立派な書店が立ち並ぶ会場と、町の古本屋さんがずらっと出店している会場にわかれていました。リッチ会場では、貧乏人の私なぞが買えるような代物はなく、モリスの本なども横目でチラリと見るだけです。
もちろんルリユールされている本もゾロゾロありましたので、先輩たちの作品をガラス越しに拝みながら進んでいくと、かの有名なフランスのBlaizot書店も出店していました。そこにはすでにアジア系のお金を持っていそうな方がガヤガヤ言いながら、商品を見せてもらっていました。現地フランスでは恐ろしくて入ることの出来なかったBlaizotがオープンスペースにあり、しかも直に触れるかもしれない、ということで、ダメっと言われそうなムッシューではなく、マドモワゼルに「すみません、これを見せていただいてもいいでしょうか、そして触ってもよいでしょうか。」と巨匠ポール・ボネの写真でしか見たことのない実物をついにこの手中に収めた(!)のでした。
革の滑らかさといい、金の輝きといい、手にしたとたんに手の一部かと思われるほどに違和感のないフォルム・・・。看板に偽りなしとはまさにこのことなんだと痛感いたしました。
次に、ロンドンにアトリエのあるイギリス人製本家のマーク・コックラムさんとその奥さんのミドリさんにお会いしました。マークさんには自身の作品を見せていただき、デザインのコンセプトなどを色々と説明していただきました。最近のブックバインディングにはそのデザインの統一性のためタイトルを入れない場合も多いと聞き、タイトルは本の顔ですよ、などと少し反論してみると、それはデザインの中にすでに表しているよ、と言われ、ドリュールの危機を感じました・・・。
ミドリさんにはロンドンに住んでみての感想を聞いてみました。私自身、ロンドンに住みたかったからです。フランス人とはまた違ったイギリス人の気質について色々とお話いただき、とっても興味深かったです。
ロンドン観光もそこそこに(時間がなくてグローブ座の舞台裏ツアーにも参加できませんでした)、今度は別のイギリス人製本家のドミニクさんとマイケルさんに会いに、人間より羊の数のほうが多い、でおなじみの湖水地方へと向かいました。(湖水地方でマイケルと言うと、ワーズワースの詩の哀れな羊飼いを思い出してしまいます。)
ドミニクさんは現代製本を、マイケルさんは修復や中世の製本のレプリカなどを作っています。おふたりはイギリス国内のみならず、アメリカでも活動されていて、西海岸では引っ張りだこだそうです。
作品をスライドショーで見せていただいた後には、予め用意していたサパーもふるまっていただき、暖かくもてなしてくれました。この心づかいに女子として恥ずかしく思ったのでした・・・。
イギリスは天気もよく空も青く(時期のせい?)、街中でもみんな親切で、10年前とは明らかに変化をとげていました。
本をめぐる旅、次回はどこに行こうかしら・・・。
つづく
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