梅雨のジメジメが続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
今回はやっと本筋に戻り、18世紀の製本に突入したいと思います。
18世紀の美しいルリユールには、主に赤いモロッコ革が使われていますが、同様に青、黄色、オリーブ色のモロッコ革も使用されていました。そのほか、褐色のヴォーはソワニエ用に用意されていました。茶色のヴォーには、スポンジを使って硫酸塩などを革の上にまき散らす加工をして、結果として現れる黒い斑点模様で傷など不備な部分を隠していました(veau jaspé)。
18世紀はルリユールが質・量ともに栄華を誇っていた時期でした。
あるアトリエでは、1日に400〜600冊もの本にドリュールをしていたそうです。装飾をつける部分には、おそらく工房の見習いにより、すでに接着剤である卵白液が塗られ、金箔がおかれた状態の下準備がされていましたので、ドラーは道具を熱するだけですぐに作業に取りかかれました。
そうとはいえ、1日12時間以上の重労働を課せられていました。嬉しい悲鳴というか、なんと言うか・・・。
17世紀や18世紀のドラーは表紙や背への装飾はとても丁寧に注意深く作業を施していましたが、タイトルの配列にはあまり関心を払いませんでした。
タイトルはまだ「あまりまえ」のものとしては普及しておらず、タイトルの活字組みにおいて真の進歩もみられません。
1790年頃に活字ホルダー(composteur)がドイツから導入される前までは、タイトルは一文字一文字個々に押されていました。
タイトルを押すためのドリュール用活字は花型同様、真鍮でできており、一番オーソドックスであまり本の内容を選ばずに使用できるセリフ書体として「エルゼヴィール」があります。
この書体は、版画に使われていた書体をクロード・ガラモンが採用し、オランダの印刷工エルゼヴィールの名を取ってつけた、と言われていますが、真意のほどは定かではありません。
ソワニエの本のタイトルはゆったりと2つに分けられ、ルリユールに使われた革と異なる色で適切な大きさに切った革の上に押していました(pièce de titre)。
一方、通常製本では、背幅に対してタイトルが長過ぎる場合(現在でも起こる問題ですが)や、おそらく面倒臭いなと思った時(あくまで想像です)には、当時のドラーたちは各々独自の方法を取って解決していました。
画像に少し説明を加えますと、上の「L.D.F.A.S.P.」というのは、長い名前のイニシャル、ではなく、「Lettres d’une fille à son père(娘から父への書簡集)」という本のタイトルの各単語の頭文字です。何かの合い言葉みたいですね。
次の「MEMO DE MOJO」は「モジョさんのメモ書き」ではなく、「Mémoires de monsieur Joly(ジョリー氏回想録)」というタイトルのようです。
何事もフタを開けてみないとわかりませんね・・・。
つづく
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