本をめぐる旅 ―スイス・ザンクトガレン編―

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Nov 30
2014
Posted in blog, miracle world by Minako at 09:35 am | No Comments »

ご無沙汰していた間、私は本をめぐる旅に出ておりました!

今回の旅は、テーマを「よみがえれ!活版印刷」としまして、主に活版印刷の軌跡をたどってまいりました。
まずはスイス・ザンクトガレン図書館(Stiftsbibliothek St.Gallen)からスタートです。


ザンクトガレン修道院は、612年ベネディクト会派アイルランド人修道士ガルス(St.Gallus)が設立したものが母体となっており、街の名前の由来ともなっています。
9世紀になると、修道会は宗教的にも経済的にも影響力のある西欧文化を導く存在となっていきました。

st.gallen interieur

教会と同じく18世紀に後期バロック様式を用いて設立された図書館には、カトリック教の保護の元、写本をはじめとする中世の歴史や暮らしを知る上で重要な資料が揃っており、約17000冊が所蔵されています。
アイルランド人修道士や聖ガルス修道院の僧たちによって描かれた写本には、音楽や文学の歴史書、古ドイツ語で書かれた法律書や医学書などがあり、アングロ・サクソン圏やアイルランドからの多くの僧侶たちがそれらの写本を写しに訪れました。
現在2100冊ある写本のうち、千年以上前に書かれたものは400冊、さらにインキュナブラも1600冊以上保管されている宝箱のような図書館です。

stiftsbibliothek

ガイド付きで見学をしていたドイツ語圏グループの説明を盗み聞きしながら(と言っても、あまり理解できませんでしたが)、舐めまわすように蔵書の数々を拝見いたしました。
写本の筆の運びの美しさもさることながら、あまりお目にかかることのない宝石がちりばめられたもの(reliures d’orfèvreries)などルリユールの歴史を知る上でもとても貴重な書物が展示されていました。

毎度のことながら、手で作られたものには制作者が無名な一僧侶であれ、魂の叫びのようなものを感じます。
冬など満足な明かりもなく、写字生は凍える手で羽ペンを握っていたことと思われますが、出来上がったものはそんな苦労を微塵も感じさせない(ところどころいいわけ的な記入はあるそうですが・・・)滑らかさと凛とした佇まいがありました。

はるばるスイスまで行った甲斐がありました。


つづく・・・。



参考までに、こちらの本の表紙はザンクトガレン図書館です。
the library
「美しい知の遺産 世界の図書館」河出書房新社 2014年



  1. It‘s quite in here! Why not leave a response?




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