今回も引き続き、真面目に19世紀の製本についてお話しいたします。
19世紀は変動の時代であり、ルリユールの概念もいろいろと変わっていきます。
【近代ルリユールの父・ボゼリアン】
19世紀のフランスでは、頻繁に産業博覧会が開かれました。
第一回目の展覧会では、ボゼリアン(兄)という、名の知られていない製本家がメダルを受賞しました。
彼は自身の大きなアトリエ以外にも書店を経営しており、出版物も出すなど多様な活動をしていました。
友人たちは、ルリユールで生計を立てることができているボゼリアンを、やっかみ半分で「近代ルリユールの父」と命名しました。
帝政時代の混乱や革の不足は、半革装を生み出し、装飾のすべては背に配置され、本が本棚にしまわれていてもドリュールの美しさが一目でわかるようになりました。
ボゼリアンは丸背出しに全神経をそそぎ、ルリユール界の新しい試みである、角背ルリユールを開発しました。角背に製本された本は、開きが良くなり、テーブルの上でもページはそのまま開いた状態を保つことができるようになりました。
ボゼリアン兄弟はイギリス様式に影響を受けながら、新たなるデザインを追い求めました。
モワレという波形模様のふんわりした絹を製本に使い始めたのも、その功績のひとつです。
まっすぐなパルメット、大小の螺旋模様、バラ、花、くねくねと絡み合った蔦、虫跡形模様、そして忘れてならない2つのCがそれぞれ左右を向き背中合わせになった模様は、ボゼリアンスタイルの特徴的なものです。
彼らは本の背に配置するタイトルも発展させていきました。
ドラーたちも、一文字ずつ押さなければならないために大惨事を引き起こす、柄つき文字に見切りをつけ、活字をホルダーに組んで使用し始めました。
そんな活躍の中、ボゼリアン・弟のアトリエに、「全工程見習い」として11歳の少年が働きにやってきます。
彼の名は、ジョゼフ・トヴナンといい、後に19世紀を代表する製本家のひとりへと成長していきます。
つづく
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